サンデー毎日、「10年後のニッポン」から 

 「自給自足」にかけるフロンティア精神
 明治維新の後、北海道に全国各地から開拓団が入植して既に一世紀余。だが、現在の北海道は、経済的に冷えきっている。その象徴が北海道経済をリードしてきた「北海道拓殖銀行の破綻」 (l997年)だった。
  その北海道を何とか元気 にしようと、斬新な構想が蠢動(シュンドウ)しはじめている。
  「北海道独立構想」だ。
  「開拓団が入植した当時、人々は高い理想を掲げていました。だからこそ、あらゆる苦難を克服できたのです。しかし、今の北海道は かつての理想とは別の世界になったのではないか」
 こう言って、今の北海道 に疑問を呈するのは、札幌 のミニFM局の人気DJを務める竹岡雅史氏だ。彼の持論は北海道の独立。放送やインターネットで北海道独立構想をブチ上げ、さまざまな主張を繰り広げる。
 「知人が東京から北海道に遊びに来るコストよりも、我々が東京を訪問する旅費 とか、ホテル代が高いのはなぜなのか? そもそも、かつてイギリス人が植民地 を旅行したのは本国の数分の一で生活ができたからだといいます。ひょっとする と、北海道は”ニッボン”という国の植民地で、本国から搾取されている可哀そうな地方かもしれない」
 竹岡氏はホームページでこう嘆き、そして、
「それなら、いっそのことニッポンから独立しよう」
 と訴えるのである。
 しかも、その独立構想が具体的だから反響も大だ。つまるところ、独立国家・北海道では「道産子の悩みの種」が逆に国家の武器に変貌しているのだ。
 その第一が、1年の3分の1の間、北海道を覆っている雪の活用?ちなみに、雪はマイナス2度の温度を保っているが、それはほぼ年間を通して新鮮な穀物や野菜などを冷凍保存できることを意味する。それを、最大限に利用し、北の大地を「食物の一大備蓄基地」にするという。
 電力は風力を利用する。北海道の3分の2の人口を持つデンマークで風力発電は全体の7%だがあ、10年後には20%に達するという。とすれば、風の強い北海道ではデンマーク以上の電力を利用することが可能だ。
  電力を限りなく自給自足体制にして、さらに余剰なエネルギーを”内地向け”に”輸出”するという。
  といっても、石油を採掘 するわけではない。逆に、環境を害さないエネルギーつまり、植物性の輪作 が可能な燃料を大量に栽培 し、それを利用する。その ためには広大な土地と効率 的な農業が必要になるが、 北海道であれば、大規模な機械化農業で、それが可能 となる……。
  「開拓団のフロンティア・ スピリットと同じ熱意で、 北海道を活性化させたい」
 竹岡氏は独立への情熱を「フロンティア・ルネッサンス」と呼んでいる。
 かくして北海道独立論は各方面に波紋を広げつつ、それは”内地”への反感も相まって加速して、さらに北方四島のエリア経済化も展望する。そして10年後,北海道庁では、日の丸が下ろされ、北の大地にふさわしい国旗がたなびくのだ。
2002,3,31 サンデー毎日