僕の父から聞いた話だが、僕が生まれる前の父の給料は2万円くらいだったそうだ。今から32年以上前の話だ。その頃はまだ1ドルが360円だったから、父の給料をドルに換算すると、だいたい55ドルということになる。
 そのころの平均的なアメリカ人の給料がいくらだったかは知らないが、たぶん55ドルとは一桁違う額を貰っていたはずだ。つまりそのころのアメリカ人からしてみれば日本という国は物価の安い国で、一日数ドルもあればかなりリッチに暮らせたんじゃないだろうか。でも今は世界有数の経済大国なってしまった以上、一ヵ月55ドルはおろか一日55ドルだって、あっと言う間になくなってしまう。
 その結果今の僕等は、インドや東南アジアの国々へ行くと、それらの国の物価の安さに驚いてしまう。日本人の中には僕のように現地へ行っては民芸品等を安く買ってきて、日本で売る生活をしている人も少なくない。30年から40年前では物理的にも経済的にもまず不可能だったろう。

 しかし栄枯盛衰は世の常であり、海にも人の心にも波があるように経済にも波はある。そのうち日本丸も平家のように没落する可能性はあるかもしれない。
そしてもしインドが何千年も前に世界で最も栄えていたように、21世紀に息を吹き返して世界有数の経済大国になってしまったら・・・・
インド人がルピ−の札束を持って日本にやってきては、安い安いとばかりにソニ−のTVやトヨタの車を買いまくったりするかも。
 海外旅行のトラベラ−ズチケットにインドルピ−が登場したり、ヒンズ−教の寺院で結婚式を挙げるのがお洒落になったり、ジャイアンツがインドの会社に買収されたりと。その可能性は交通事故に遭うより確率としては少ないが、海に落ちた指輪を見つけるよりは高いだろう。(あれっ、逆かな?)
ま−いいや、とにかく何が起きるか分からない21世紀になろうとする今日この頃、そのような事態になっても不思議はないということです。
 だって30年以上前に来たアメリカ人が1ドルでカツ丼を食べてお釣りをもらっていたのに、今は逆に英語教師等で出稼ぎに来ている時代なのだから。その中には本国に帰っても職がないので、ず−っと日本に住み着いてしまう欧米人もいるのだ。30年前の日本人は現在の状態を予測できただろうか?

 でもってこれから21世紀である。あったりまえだけど、これから始まる未来のほうが予想のつかないことは起きるだろう。今までのシステムとか価値観がどう変わるかは分からないが、確実に何もかもが変わると思う。今日までの30年後とかではなく、もっと近い将来、それも加速度を増して。
 そして万が一インドが経済大国になってしまうと困るのは、僕等のようなエスニック雑貨屋なのです。円がルピ−より強いから飛行機代を払っても、現地へ行って宿泊代をかけても、仕入れをして送料や税金を払っても、日本で売れば線香一箱は200円で売ることはできます。ルピ−の価値が何倍のも上がってしまうと、布切れ一枚を仕入れるのにセイコ−の時計と同じくらい払うことになるかもしれない。つまり僕の店で売っている200円の線香や、1000円のスカ−フやリングはめちゃくちゃ高いものになってしまう。そうなることを、商売あがったり状態といいます。

 逆にインドに出稼ぎに行って、皿洗いかリキシャ引きでもするしかない。いや待てよ、今まで安かったインドグッズが高くなるってことは、高級品になるってことか!200円のお香は免税店の香水売場のシャネルの横で何千円かで売られたり、3800円の服がブランド品となって何万円もしたりもする。う−ん、それって悪くないね−。
というかミナサン、だとしたら今がチャンスです。
エスニックグッズの買い時期ではないでしょうか。
何年か後に何万円も出して買うであろうインドの服が、いまなら「夢横町」で何千円で買えちゃうかもしれない。
貯金の利息を考えると、ず−っとお得な話でしょう?

 「夢横町」で見る白昼夢でした、続きをお楽しみに。