21世紀明けましておめでとうございます。
年末ぎりぎりに久々の新著が刊行の運びとなりました。文筆稼業も四半世紀、屋久島に移り住んで19年、著訳書は60冊を越えましたが、第二の故郷である地元鹿児島の出版社からは始めてです。
こんどの本はちょっといわくつきです。
このメールをごらんになる方々の多くはご存じのとおり、99年末から隣の種子島に使用済み核燃料の中間貯蔵施設を誘致する動きが浮上して、私も家内も地元の住民や議員有志とその予防措置に全力を尽くし、1年がかりで種子・屋久両島1市3町の核物質拒否条例制定と、鹿児島県議会および県知事の反対表明を引き出すことができました。推進派は隣のトカラ列島(十島村)まで触手を伸ばしている模様ですが、同じく核拒否条例が制定されることになり、この地域全体で核燃施設をはね返せそうです。このかん、各種の署名をはじめ心強いご協力ありがとうございました。
こうした動きがはじまったばかりの2000年1月、鹿児島の主力紙である南日本新聞で「南日本文学賞」の募集があり、評論部門という枠も設けられていたので、万一受賞すれば紙上発表によってたくさんの人に原子力の問題を考えてもらえると、正月返上で50枚の中篇「原子の火を見つめて」を書き上げました。日本の原子力政策と太平洋戦争の負け方とを対比させ、ふつうあまり語られない経済性・民主性・倫理性の三点から脱原発を訴えたものです。3月の選考・発表では落選でしたが、発表後、選者の一人で友人の作家・宮内勝典さんに「こんなの出していたんだよ」と見せたところ、「これが最終選考に残っていたら絶対押した!」と強い共感を寄せてくれました。最終5作にまで絞るのは新聞社側で、宮内さんは読んでいなかったのです。これに意を強くして新聞関係者にも見せた結果、さいわい単行本出版が決まりました。
しかし、新聞社としても反原発を前面に掲げた本は出しにくいということで、単行本にふさわしい分量に膨らませる意味でも、半分はここ10年ほどの新聞・雑誌既出原稿から選りすぐったうえ、もう一本、世界遺産登録後の屋久島が抱える課題をテーマにした中篇「世界遺産という宿題」を書き下ろすことになりました。結局、下記のとおりずいぶん盛り沢山な内容になり、おまけに夫婦で撮りためた写真もちりばめて、読みごたえじゅうぶんの本ができたと思います。「水」を柱に、ヒトが内外の自然とうまくつきあっていく道を探りながら、地方自治の未来まで見通す、私なりの新世紀随想というところでしょうか。
ただ地方出版ゆえ、鹿児島以外の方々には目にも手にも入りにくいので、こうしてご案内差し上げることにしました。DM葉書と重複したり、このメール案内が何度も転送されてきたりした場合は、お許しください。また、ここ1年ほどの交信記録からアドレスを拾ったため、人によっては「市民運動の人脈を個人の営利目的に利用するな」とお叱りになるかもしれません。
しかし、作家というのは個人NGOみたいなところがあって、著訳書を買ってもらう形の寄付で活動を続けるしかありません。正直なところ、この1年ほとんど本業を休止して核問題にかかわり家計は火の車。一種のカンパ要請とご理解ください。
注文は最寄の書店、図書館、オンライン書店などを通じてでもかまいませんが、時間がかかると思います。
一番早くお手許に届く方法として、編集・発行元の南日本新聞開発センターへ電話(099-225-6854)かファクス(099-226-0404)かEメール(
hontumon@po.msinbunkc.co.jp)で、住所・名前・希望冊数を添えて申し込むことをお勧めします。2001年1月いっぱいは送料無料サービス!
前世紀中にお世話になったみなさま、本当にありがとうございました。
2001年が、そして21世紀が、混迷の中からも真の希望を産み出しますように!
この案内は、もちろん転送大歓迎です。
P.S. 種子・屋久地域における使用済み核燃料中間貯蔵施設拒否の軌跡は、私が事務局を務め、自治体として先頭を切った屋久町の拒否条例案を含む、ほとんどすべての文書作成を担当した《核廃棄物の中間貯蔵施設をつくらせない市町村議員住民連絡会・屋久町事務局》のホームページ
http://www3.ocn.ne.jp/~nonukes をご覧ください。