加納 雅

 私は、社会の表と裏を行き来している。

 道徳的な観念として表だけの生活で人生を全うしたいと願っているが、私の周りには裏の人間が多く集まり、必然的に裏の仕事で得る収入の方が表に対して圧倒的に多いのでは裏に携わるのも、生きていくためには仕方が無い。

 さて、以前よりかねがね思っている事を この場を借りて「王様の耳はロバの耳!!」と掘った穴に叫ばせて貰い 少しはストレス解消をさせて頂こうと思う。


「義務教育に必要なもの」

 最近の子供達の中には「どうせ人を殺すなら未成年のうちに・・・」と言わんばかりに「少年法」を悪用しているケ−スが増えているが、私は現在の義務教育において、卒業して社会に出ても全くと言っていいほど役に立たない微分積分を教える暇があったなら、金銭に関する実践的なもの― 特に、納税に関する法律(特に相続税法)とか、金利計算(特にロ−ン計算)等といったものを、もっと実際に即した現実的な例を基に教育して欲しいと願うものである。

 私の身近に いわゆる"モグリ"の金融屋と呼ばれる人物がいる。おそらく彼は、私が知り得る人々の中で、そんじょそこらの会計士や大手企業の経理マンだとか平凡な弁護士なんかより、お金にまつわる法律を熟知している。その彼が何故"モグリ"なのかと言えば「"モグリ"だからこそ高い金利が取れるんですよ」と違法を承知で営業している。

 一般的に"トイチ"と言えば10日に1割、"ツキイチ"と言えば1ヶ月に1割の金利をつけると言う意味であり、古来より高利貸しの別名であったのだが、最近の彼の所では"トサン"、"ツキゴ"と言い、10日に3割だとか1ヶ月に5割なんて金利がまかり通っている。

 彼が言うには「バブル崩壊の後、カ−ド破産なんかで石を投げれば破産者に当たるんじゃないかと思えるぐらい破産した人間が多くてねぇ、この自己破産による破産者の最大のデメリットとは一般の金融機関からお金を借りれない事でして、そういう人ならば 先に述べた高利であっても、向こうから御願いしますとモミ手をしながら借りに来るんですよ。」と言う。

 私は、それに対して「破産するような人が相手じゃ、万が一の時に取り立てられないんじゃないの?」と聞くと、彼は笑いながら「そりゃ返済能力が無い人には貸せませんよ。でもね、最近では破産者なのに不動産なんかを持って、返済能力は無くても美味しい担保のある人が多いんですよ。」と実に不思議なことを言う。不動産など資産を持った人間は簡単に破産できないように破産法では規定されているはずなのだが・・・。

 「つまりですね、自己破産した後に親が死んで遺産として相続した不動産を持っていると言う訳でして、そういう連中は、たかだかカ−ドの金利計算を出来ずに借りすぎて破産しちゃった様な連中なわけですから 相続に関する事なんて まるで無知で、破産の影響で相談できる友達も無くしちゃってるおかげで 全くと言ってよいほど節税処理がされて無いんですよ。
その結果の高い相続税を払うためには、その遺産を担保にお金を借りなきゃ・・・となるんだけど、破産者ってことで普通には借りれないから私らのとこに来るわけですよ。
それに対してこちらは場合によっちゃぁ脱税スレスレまでやるわけですから破産者にしてみりゃ神様に見えるんでしょうねぇ・・・」

 「で? 君は脱税スレスレまでの作業をして多く残した担保を返済能力の無いことを見越して高金利で締め付けて、その殆どを取り上げちゃうわけだ?」

 「エヘヘヘ、そりゃいずれ殆どの遺産がアタシの物だと思えば残す算段にも気合いが入りますし、そういう担保のある方には親切丁寧に対応しますよ。ただねぇ・・・ ホントの事を言えば、私らなんかを頼らなくてもちゃんと最低限の知識を持ってれば、誰にでも充分に対処出来る事なんですけど、破産しちゃう様な人にはその辺が欠けちゃってるんでしょうねぇ・・・。 まぁ、お陰様でこのところは忙しい毎日です。」

 彼はそう言うと、本当に忙しそうに携帯電話を握りしめ、数年前までなら自分のコ−ヒ−代ですら私にたかっていた筈なのに、その時ばかりは私の分まで払って喫茶店を出て行ったのを見ると、本当に儲かってるんだなぁと思う。