香山 浩三

 シャ−マンは人間という種の特殊なパソコンで、普通のパソコンと違うところはソフトだ。ソフトウエア−のシステムアップ機能が特殊で、誰もが見ようとしない次元を呼び出してしまう。見ようともしない特殊な場所を呼び出し、不思議な空間を脳裏に浮かび上がらせるのだ。それは神秘的な空間の様相を示してはいるが、誰もが見たいと望むなら必ずそうできる可能性がある。それを信じてひと工夫すれば、すぐさま手に入る世界だ。問題は考え方で、重要なのは自由をとことん追求する心構えだ。タブ−は禁物で例え法律に触れようが、臆してはいけない。

 ドラッグでも制御できる自信があれば試す覚悟が必要だし、あえて命を脅かす危険性があっても立ち向かわなければ理解らない世界もある。恐れず、躊躇わず、自分の本能を疑わず、ひたすら真理を求める意識に集中し、好奇心を満足させるように心掛けると見えてくる。あえて危険を望む必要はないが、冒険を恐れてはシャ−マンにはなれない。自分の限界に挑戦する覚悟があれば、向こうの世界が見えてくる。
 死ぬことはそんなに怖くはない。生まれる前の状態に戻るだけのことで、懐かしくて安らげる場所への回帰でしかない。誰もが安易に帰ってこられると困るから、死の入口に恐怖を覚えるような仕掛けがしてある。それは無駄な自殺を予防するための装置だ。しかし、いたずらに死を恐れては自分を貫くことは出来ない。理不尽で自分を損なうような状況にあっては、敢然と死に立ち向かう態度が要求されることもある。その時はスパ−ンと全力で進むほかはないだろう。

 シャ−マンは臆病者を勇者にするために、あらゆる状況で試練に合わせてくれる。いわゆる通過儀礼・イニシエ−ションという、生と死を模擬体験させてくれるバ−チャルリアリティ−を用意する。生物として命をこの世に受けた存在なら、死を回避するためにあらゆる努力をするだろう。しかし、死が避けられない状況になった場合は速やかに受け入れる覚悟をすべきだ。そのことに躊躇して自分の意思を裏切ることが後悔を残し、残りの人生をつまらないものにする恐れがある。大事なことは目一杯に生きること。
 人間関係が苦手な人がクヨクヨするのは、相手の妬みや怒りが自分に降りかかるからなんだけど、それは命を奪うほどのものではない。何となく相手が自分より優位にたって脅かそうとしている気になるとき、弱気になって自分を隠してしまうことがある。自分の立場を守りたいがために、自分自身の権利を相手に譲ってしまうのだ。そんな日常的な場所でも自分の意見を堂々と主張する勇気が要求されるし、普段からそのような訓練をしないと必要とされる勇気は育たない。

 シャ−マンはこの世の中を否定するような状況に遭遇する可能性もあるし、自分の命と引き換えに真実に迫る事もあるからだ。普通の人には見えない世界をかいま見る特権は、自己犠牲と交換することで与えられ、死の世界とも交流する場合もある。その時には自分の身体を宇宙に預け、精神的な媒介である意識のみが情報を得る。肉体に対しての執着が強いと恐怖感も大きくなるが、それを棄てることで自由に貴重な情報が手に入ってくる。

つづく