ほとんど裸で暮らせる南国から故郷の酷寒の大地に飛んで帰ってきた。
星が降る駅に舞い降りて、厳しい寒さで凍りついた夜空を見上げると、宇宙の永遠が見える。なんせ乗ってきたJRの路線名が銀河線なんだ。

 この厳しい寒さの冬、里の人が寝静まった夜中に帰郷する気分が好きだ。ギシギシきしむ道路を歩きながら懐かしい家並みを探し、まるで自分の面影が無いことに驚く。それでも町の輪郭のイメージは脳裏に浮かぶ。
いつも夢の情景として残っている。

 子供の頃の風景は、夢になって出現する。
夢の中の風景は崩れることなくシルエットを保っている。
薄暗いけれども馴染み深い世界に取り込まれ、過去に何かを求めている自分がいる。

 ふるさとは意匠を変え、新しい道を模索しているんだろう。都会に集まるものは、なれない環境に早く馴染もうと必死だ。両者に共通していることは、時代と周囲の変化についていく自分自身の調整。変化する世界と対等な価値を、自分の中に創る必要があるという焦りだ。

 それらの意識を運んで、ふるさと銀河線は走り続けてきた。
利用者が少なくなって線路が外されたとしても、宇宙の永遠を目指して一両のジーゼルカーが走りつづける。夢の中で深夜特急銀河船に乗って過去から未来へ旅をした。

 故郷は僕を素直な子供に返してくれるようだ。


※北海道新聞 『朝の食卓』 に寄稿