北原 理作


 エゾシカの保護管理計画がスタートして5年経ちました。この5年間で被害はかなり減りました。その代わり多くのエゾシカが捕獲されました。巨額の費用を投じて農耕地に侵入防止用のフェンスが張られました。多くの猛禽類が鉛中毒で死にました。ハンターの密猟は、毎年報じられ無くなりません。猟銃が盗難被害に遭う報道も目立つようになりました。

 タイトルに関連した記事(毎日新聞)の要約は以下の通りです。
判決によると、被告らは昨年11月6日午前5時40分ごろ、北海道三石町の町道に止めたトラックから、放牧中の競走馬3頭をシカと間違えてライフル銃で撃ち、2頭を死なせ、1頭に大けが(安楽死処分)を負わせた。死んだ1頭は、天皇賞馬バブルガムフェローの子馬だった。被告は道内で使用が禁止されている鉛弾を使った。

 私は、このような事件は、起きるべくして起きたと思います。対象が、馬でなくても、似たような事故、事件は今後もまた起きる可能性は十分あると思います。エゾシカ保護管理計画では、被害の軽減だけでなく、エゾシカとの共生や生物多様性の保全も目標としています。よって絶滅させないように、様々な調査から得られるデータを参考にしながら、駆除や狩猟の許可に制限を設けて個体数管理を行っています。

  ですが、実行するのはハンターですから、必ずしも保護管理に協力的だとは限りません。プロのハンターはほぼ皆無で、狩猟をする理由も趣味の延長が大半を占めるでしょう。ハンターによって報告されたデータも正確とは限りません。研究の進展で多くの成果が得られるようになりましたが、十分とはいえません。データの集計にも時間がかかり、計画にスムーズに反映されません。ハンターの多くが高齢者ですから、現状の個体数管理手法はいずれ行き詰まると思われます。仮に個体数管理が上手くいっても、生息地管理が不十分であったり、エゾシカ個体群が低質であれば、保護管理は成功ではありません。

 さらに共生というのは、なぜエゾシカの被害が爆発的に増加したのか?なぜ保護管理のような手間のかかることをしなければならなくなったのか?被害を減らす手段として捕獲以外の方法はないのか?これから自分に出来ることはないのか?など・・・道民がよく考え反省し、前向きに行動しない限り達成しない目標だと思います。行政の役割は、そのような取り組みをサポートすることだと思います。「もっと撃て」「殺すな」という単純な意見に振り回されずに、建設的な意見には利害関係者か否かを問わず傾聴すべきです。現在エゾシカは、道民共有の財産であり特定の人間の所有物ではありませんから。