北原 理作


 全国各地で種の絶滅が懸念されたり、外来種の増加が問題となっています。これらの原因は様々ですが、問題が表面化する初期の段階で十分な対策を講じれば防げたものも多いはずです。対策には、研究、アセスメント、教育、法の整備、生息地保全などいろいろあるでしょう。問題が表面化してから慌てても良い成果はほとんど期待できず、対策コストは膨らむ一方です。北海道でも、多くの野生生物は絶滅と無縁ではなく、明治時代にはエゾシカも絶滅寸前まで減った動物です。

法の整備に関連して、野生生物保護法制定をめざす全国ネットワーク
http://www.asahi-net.or.jp/~zb4h-kskr/wildlife/ を紹介しておきます。

  野生動物に出会う機会がほとんど無い都会の方は、もし畑で駆除されるエゾシカの場面をTVで見たら、憤りを感じたりかわいそうと思ったりする方も多いでしょう。ではどうしたら、そういう状況を避けることが出来るようになるでしょうか?

  北海道東部のエゾシカを例に挙げれば、森林を伐採し、人工林や農耕地を造成したり、道路を建設し法面を整備したことが、爆発的増加の一因とされています。その結果栄養状態は向上し繁殖率は高まったでしょう。さらに、絶滅の危機から救うため、メスジカの捕獲禁止などの長期におよぶ保護政策が増加を後押しし、積雪の少ない年が連続的に続くと餓死で死なないので爆発的増加に拍車がかかります。逆に絶滅の危機は、乱獲と連続的な大雪によります。

  開発によって、観光を楽しんだり安定的に食糧を生産出来るようになったのですから、人間にとっては悪いことではないでしょう。しかし、シマフクロウなど野生動物の一部には絶滅の危機が迫り、エゾシカのように農耕地を好んで利用する動物との間には、被害という大きな軋轢が生じています。既に開発された場所について責任追及しても仕方ないのですが、これ以上の開発はしない、人工林の一部を広葉樹の森林に転換する、河畔林を育てるといったことは出来るでしょう。

  農村を再生させることも重要でしょう。農家の割合が高い北海道の地方都市では、公共事業、観光、農林水産業などの産業が主流です。農林水産業は、輸入品との競争にさらせれていますし、農薬や肥料の大量使用に伴う環境汚染も深刻です。多くの農家が、農業と畜産を切り離しかつ規模を拡大し、低コストで効率良く大量生産を行っています。場所によっては土地が痩せているところもあります。

  少なくともこのような農業形態は、雑木林の管理と農業畜産業などを両立させ、堆肥を還元し多様な生き物と共生しているいわゆる里山の手法とは違います。ですが、北海道の農家がそういう農業形態を選択している理由の一つに消費者のニーズが影響していると思います。消費者が安いものや外見の良いものばかり求めれば必然的にそうなるでしょう。観光も同じで、温泉と食事と景観をツアーの格安料金で楽しみたいとなれば、リゾートなどが温泉地に作られるでしょう。

  例えば消費者が多少高くても農家から直接有機農産物を購入する、観光客が景観を楽しむだけでなく体験型の観光をしたいと思い行動すれば、生産者や住民の意識は少しずつ変化していくと思います。北海道は、自然エネルギーの宝庫ですから、農村部におけるバイオマス発電などの分野は成長が見込めるでしょう。