佐々木 亜弓

− 続バイオダイナミック農法とは −

 バイオダイナミック農業とはオ−ストリアのルドルフ・シュタイナ−(1861〜1925)が提唱した有機農業で、日本ではほとんど知られていませんが、ヨ−ロッパを中心に米国、インドなど世界各地で広まりつつある有機農業の最高峰ともいうべき農業です。 バイオダイナミックスの語源はバイオ=生命、命、ダイナミックス=エネルギ−学、動力学であり、生命とはリズムであるという考え方に基づいた生命エネルギ−を扱った実践学問ということが出来ます。
 このバイオダイナミックスにおいて、1つ1つの農場は独立した有機体とみなされ、完全自給自足である、もしくはそれに向かうことが求められます。また、決められた手法を盲目的に実践していくのではなく、それぞれの農場経営者が生命に対する理解を深めていくなかで絶えず農場及び農作物の質を向上させていく努力をします。また,農場経営者の精神的向上が何よりも求められます。バイオダイナミック農場経者は人々の身体的かつ精神的健康を維持し、さらに向上させるための作物づくりを主眼としますが、というのも精神的不調和も食物中のエネルギ−不足からくると知っているからです。
 バイオダイナミックスにおいて人間は肉体レベルでは頭、心臓、内臓の3つが、それぞれ精神レベルの思考、感情、意志の3つに対応していると考え、この3つがうまく連動していない場合、もしくはバランスが悪い場合はその人間のあらゆる意味での不調和が生じます。
 バイオダイナミック農場の運営は地域、国、地球という範囲にとどまらず、視野を宇宙にまで広げ、太陽や月、またその他太陽系惑星と星座の位置関係でエネルギ−の質や流れを図った上ですすめられます。バイオダイナミックスは実際、土壌や作物、害虫の研究といった断片のみにとらわれず、太陽系宇宙ひいては全宇宙のエネルギ−の流れを考えて体系だてられた学問であり農法であると言えます。
 実際の農作業では、特に月と星座の位置関係が重要視されますが、これに基づいた農事暦(バイオダイナミック・カレンダ−)もあります。栽培作物を果菜類、花菜類、葉菜類、根菜類の4種類に分類してそれぞれの作物にてきした時間帯に作業をします。例えばタマネギなど根菜類であれば、月の背景に土の星座と呼ばれるおうし座、乙女座、もしくは山羊座がある時(根の日)が適した作業時になります。「根の日」に作業することによって病気も少なくなり、丈夫なタマネギに育ちます。月が水の星座である魚座、かに座、もしくは蠍座にある時(葉の日)にタマネギの収穫を行うとタマネギの辛味が和らいで食べやすくなる反面、長期保存には適しません。長期保存する場合は「葉の日」を避けるなど、具体的なものです。
 バイオダイナミック農業に欠くことの出来ない「バイオダイナミック調合剤」は1924年にルドルフ・シュタイナ−によって打ち出されました。この調合剤はもちろん100%天然の物質からホメオパシ−の原理に基づいてつくられたもので500 508まで9種類があります。それぞれの調合剤がそれぞれの惑星からのエネルギ−を受けて作用し、農地がバランスのとれた有機体となります。
 実はもう1つ重要な調合剤があり、シュタイナ−は彼の農業講座の中で少し言及してはいましたが、その本格的講義を行う前に亡くなっています。その重要な鍵となる調合剤が、ほんの数年前、ある米国人によってやっと世に出されました。これは「ホ−ン・クレイ」と呼ばれる調合剤ですが、既存の調合剤にこのホ−ン・クレイが加えられ、調合剤はよりバランスのとれたものとなりました。