竹岡 雅史


 −THE DAWN OF MYTH−

 自分がこの世の中で何をしているのか、生きる意味を理解しながら生きているのか、生まれてきた目的を忘れてはいないか。我々の本来の姿を映す鏡は何処にあるのか。この人生の意味とは何なのか、無性に魂が騒ぐときがある。
 時代もまた世の中がどうなっているのかを、歴史はどこまで続くのかを知りたいときがある。そのようなときには神話を蘇らせ、内なる宇宙に疑問を投げかけるのだ。神話は宇宙に魂を飛ばしながら、我々がこの惑星に至った瞬間を再現してくれる、不思議で刺激的な物語を与えてくれる。

 神話を語るシャ−マン達も、世界に向かってメッセ−ジを投げかけるミュ−ジシャン達も、創造に係わる者ならだれでも魂の物語を知っている。魂の物語は心と身体に刻まれて祖先から受け継いだ、宇宙と自然と人間のハ−モニ−を奏でるプレリュ−ドとなる。これから始まる本当の物語の開始を知らせ、やがては地球上の存在が本当の物語の主人公となっていく。

 神話は過去の話というよりは、未来を指し示す道しるべである。人間がたどるべき方向を示す、マイルスト−ンの様なものだ。それには人間の歴史と宇宙のなかに生まれてきた意味が述べられている。その神話の世界では神々の領域であったことが、現在では人間の世界にも起きている時代になった。と同時に神話のなかで予言されていたことも、そろそろ現実的な問題になってきた。

 現代は科学的ハイテクマシ−ン文化とも言うべき、人間が脳のなかで想像したモノすなわち機械、とりわけコンピュ−タに制御された社会になった。すべての都合はコンピュ−タの性能次第で決まり、科学が無視しているジャンルも当然と排除する。死んだ先の世界や生前のことなども当然排除されている。

 ところが人間が最も知りたいジャンルは其処にあるので、欲求不満になった意識は禁じられた領域に接近する。神話を通じて古代人の知性と出会い、シャ−マニズムの宇宙観に新鮮な驚きを覚えたりもする。神話とかシャ−マニズムの不思議な世界にハイテク時代が見えることで、未来と過去と現在の境界が消えることに我々の行き先には神話の世界が待ち受けている可能性があり、ハイテクマシ−ンという魔法を使って古代に戻ることもできる。仮想現実の究極のソフトウエア−には神話が最もふさわしい。


「先住民族に残っている神話や伝承から、グレ−トジャ−ニ−を探す」

(1)北米のネイティブのイロコイ族に伝わる神話から
 ここから、われらがとても大切にしている二つの物語がはじまる。石の雨をしのいだ一族、海辺の渡りを越えた一族、もう一度大海の里をつけ、そこを去らねばならなかった一族、それらの一族が果てしない山並みに沿って、南の道をたどっていた。沢山の人生がその旅に費やされた。その長い時代に、人並みはずれた「先を見通す男」がいた。
−と続きます−
(一万年の旅路)ネイティブアメリカンの口承史/ポ−ラ・アンダ−ウッド著、星川淳翻訳 −翔泳社−
(この本は今回のことに強い関連があります。ぜひ読んでみてください)


(2)仏領ギアナのスリナム(アマゾン北西部)に住むティリオ族の言伝えから
遠い昔のこと、ティオリ族は非常に冷たい白い大地を横切って来た。とても冷たかったので、獣の皮にくるまって歩いた。
(シャ−マンの弟子になった民族植物学者の話)より/マ−ク・プロトキン著

「先住民族に関する研究書から、グレ−トジャ−ニ−を探す」

 コロンビア先住民のヤノマモ族の血液の特徴から、ヤノマモは隣接する部族とは明らかに違った血液成分を持っている。アメリカの先住民は血液中にディエゴ因子とよばれる物質を持っているが、ヤノマモにはこの成分が欠けている。
 ヤノマモは最初にベ−リング海峡を渡ってきた民族の直系の子孫で、他のインディオ達はもっと後年に海を渡ってきた民族の血を引いた。  つまり、グレ−トジャ−ニ−は何回にも別れて続いてきた可能性がある。ヤノマモはアイヌと同属らしい可能性もある。武力に優れた種族でもある。
(ヤノマモの血液の特徴について)ヤノマモ−猛々しい人々より/ナポレオン・シャノン著