北原 理作

・  フィードバック管理の問題
 農林業被害額、CPUE、ライトセンサスなどのデータは、集計に時間がかかり、もしくは調査時期が狩猟期直前であるため、速やかにフィードバックされにくい難点がある。特にフィードバックに重要なライトセンサス(秋)は、各市町村において、面積が広い市町村、属地有害駆除頭数とライトセンサスにおけるカウント数の間に大きな開きがある市町村等において、調査距離や回数を増やす必要性があると考えている。また、春のライトセンサスは、これまで実施した調査によれば、秋よりも目撃頭数が多い場合が少なくない。その年の狩猟や自然死亡が個体群に与える影響を反映することから、実施すべきであろう。
 調査時期のタイミングは、雪解けと季節移動の年度間のバラツキを考慮する必要もあるが、多少調査日をずらして、5月中旬前後に3回以上実施すれば大きな問題とはならないであろう。

・  その他
 これまで述べた点の改善は、いずれもより一層の調査研究の充実が必要不可欠である。その為には、行政側にもサポート体制の整備充実が求められる。
 さらに、保護管理計画を進めていく上で、情報公開、説明責任、合意形成を、怠ってはならない。被害が軽減したり、エゾシカの存在価値が多様化し広く住民への理解が得られた場合には管理目標を柔軟に変更し(例えば個体数の管理目標を一律25にせず、防鹿柵の有無やエコツアー事業の展開など地域の実情に応じて個体数指数25−50の幅を設ける)、個体数調整のみに頼らない共生スタイルを確立していくことも重要である。
次項に続く