竹岡 雅史

〔ア−ティストの才能を100%伸ばすことのできる、理想的な場所を提供する。〕
 共産主義は失敗したゆえに、ユ−トピアを夢想することは馬鹿げたことだと思われている。資本主義は本当に共産主義を崩壊させる力を持っていたのだろうか。共産主義を提唱したマルクスは肝心な何かを見失って、安易な唯物論に陥っていなかっただろうか。つまり一つの試みが失敗すると、何もかもが同じような結果を迎えるという錯覚をする。しかし、経済的理想社会を追求することを諦めた世界とは、本当の意味で進化するのだろうか?

 競争意識を煽って生産能力を高めたり、将来の不安をエサにして思考を停止させることで、企業が人間をこき使う時代は終わらせる必要がある。それを実現させるには、人々の内部に眠っている可能性をひきだす必要もある。そのためには個人的な直感による人生の選択願望を待たねばならない。この世に生まれてきた以上、これだけはやってみたいという、生きる上での使命感を満足させなければ生きる意味はない。

 そこで提案、世界中のア−ティストに呼びかけて北海道に住んでもらう。条件は税金を免除することで、代わりの条件として印税の10%を払ってもらうということ。高い税率に悩んでいる納税高額者に呼びかけ、北海道に住むなら一律に10%でよいことにする。高額な税金を納めてもノ−パンしゃぶしゃぶに使われる、そのような虚しい使われ方に腹を立てている人々に住んでもらう。ミュ−ジシャンでも作家でもア−トの職種は問わず、自分自身の才能を作品として生計を立てている人々に。今は売れていなくとも将来性があると判断する面接考査はあるが、資格を得られると住居と土地を無料で提供する。

 ニセコとか地方に空いている別荘を上手に買い取り、それを彼らに提供する公的資金を作り、彼らの創造活動に最適な環境を用意してやる。世界中から優秀な創作家に住んでもらうことで、北海道には地球規模の頭脳集団が集まってくる。彼らには年に一回の発表の場が与えられ、コンサ−トとか展覧会とか講演会とか上映会などのフェスティバルを開催出来る。北海道にはお祭りがないといわれるが、よさこいソ−ランのように自己発展する催しが育った。世界中のア−ティスが集うことが出来れば、それら既存のフェスティバルを巻き込んで成長する可能性が生まれる。野性がよみがえる大地に繰り広げられる、新しい文化を作る試みが北海道の各地で展開され、それを観るツア−を観光の目玉にする。