竹岡 雅史

 北海道の歴史にはまだまだミステリ−がいっぱい。

 小樽と余市の境界線を跨いで、世界的にも貴重で珍しい古代遺跡がある事実を知っている人は少ない。そこにはストンサ−クルが数百も存在し、興味深い壁画を残すフゴッペの洞窟がある。それなら知っているという人でも、其処を訪れてじっくりと歴史考証を試みただろうか。案外と不思議で面白くてワクワクする、全く新しい北海道の歴史的な意義を発見するかもしれない。

 妙に気を魅くエニグマ(謎)的なモノは、フゴッペの洞窟に描かれたシャ−マニズムの模様だろう。洞窟に入って南側には翼を持ったシャ−マンが人々を集め、北側ではアンテナのような角を生やしたシャ−マンがいる。それぞれ違う部族のシャ−マンが何かを相談している様に見える。それとも戦争が終わって互いの行方を占っているようにも見える。ともかく、異なる部族がミ−ティングをしているらしい。

 翼を持つシャ−マンはモンゴル地方に多く、角を生やしたシャ−マンはシベリアに住んでいた。その異なる地方のシャ−マンがフゴッペの洞窟で何を相談したのだろうか。考えられるのは、ベ−リング海峡を渡ってグレ−トジャ−ニィ−を開始する計画だ。北海道に住んでいた先住民をフゴッペの洞窟に集合し、シャ−マン達が知恵を結集してサバイバルを考えた。アイヌが北海道に住み着く前の遠い昔、彼ら古代の人々は大きな危機を迎えていたのかもしれない。そのカタストロフィ−を打破するための重要な会議がそこで開かれた。それを後世に伝えるための儀式的なシンボル絵図が壁画であり、文字を持たない民族のメッセ−ジだった気がしてならない。

 何故にあれほどのストーンサークルが密集し、明らかに異なる部族が集合して何かを交感している。そこから見えてくる歴史的な事実を世界中の知能が考察する、それだけで新しい人類の歴史が浮上する、そのような感覚を与えてくれる遺跡が北海道にある。そのことが暗示する意味を考えると、我々が何気なく住んでいるこの大地は先住民の重要な決定が成された、人間がこの世に生まれてきた意味に迫る根源を討議した場所のように思える。「試される大地とは」来るべき時代において道産子に何が出来るのか、歴史的に見てそのことを試されているような気がしてならない。