竹岡 雅史

<一月二十日土曜日> オランダへ
 闇のなかミラノ空港に着くとすぐに荷物を預けた。定刻より二十五分遅れてミラノを発ち、アムステルダム・スキポール空港に午前九時に到着。席は窓側だったので景色を見ていたら、アルプスに朝日が当たって綺麗だった。一段と高い頂が見えたので双眼鏡で覗いてみると、どうやらマッターホルンのようだ。あまり自信はないけど、写真で見た形に似ていた。
 スキポール空港では四時間の待ち時間があったので、税関を通り抜けてアムステルダムに足を下ろした。といっても空港のすぐ前をうろうろしただけで、オランダらしいものは何もなかった。免税店で娘に香水とチョコレートを買い、息子には特別なお土産は買わなかった。それでも何かないかと探していると、偶然に患者で友達の柳谷さんとバッタリ。
 彼は趣味のオーディオ製品と、アナログレコードをどっさりと買い込み、KLMに重量オーバーで追加料金を取られたそうだ。苫小牧在住の音楽マニアで、オーディオもレコードコレクションも半端ではない。そのうえに何を今更と思うのだが、コレクターの欲望は限りないものらしい。大量のイタリア美術を見てきたあとだから、そんなもんかと思ったり感心したりする。彼は超過料金を払ってファーストクラスへ乗った。持ち込み荷物が大きいため、エコノミーの席では小さくて納まりきれないそうだ。得をしたんだか、損をしたんだか、よく分からないけど、柳谷さんにはこのような場面が似合っていた。
 それでも僕たちのエコノミークラスは空いていたので、中央の列の座席を独り占めして寝ころぶことが出来た。鼻水がぐしゅぐしゅする僕を除いて、皆さんユックリと寝ることができた。ビデオ映画はつまらないので本を読みながら、絶えず鼻をかんでいたのでヒリヒリした。多分にカルチャーショックもあって、イタリアの夢を見ていた気がする。
 <一月二十一日日曜日> 厳寒の千歳空港に到着
 荷物到着せず。自宅に戻って風呂入って寝た。時差ぼけとカゼのため、翌日も僕たち二人は一日中寝狂った。

「格安海外パックツアーの実態・イタリア編をまとめる」
 欠点として ホテルが都市の中心部から離れている
       自由時間が思いのほか少なくて、面白い冒険を期待できない
       三食付くのはいいが、好みのものをアレンジできない
       忙しくてゆっくりイタリアを楽しめない
 長所として 移動手段の確保を心配しなくていい
       面倒なことを処理してくれるので、慣れない者には助かる
       食べることの心配が一切なく、ホテルも確保されている
 次には自分自身が計画してイタリアに行く気だが、ビギナーにとってのレッスンとして修学旅行として、なかなか侮れない旅行商品だ。特に言葉が自由に使えない人には、安心して楽しめる唯一の旅行手段だろう。添乗員次第で面白いことも起きる可能性もある。
 イタリア旅行をして感じたことは、ヨーロッパはアジアとは違う価値観で成り立っている、ということだろうか。意識というか心とか魂という観点で、決定的に何かが違った。
 それが何かということは、まだまだ旅を続ける必要があるのだろう。
to be continued