竹岡 雅史

「エレファントの語源はタイの言葉で、エラワンからきている」 2月22木曜日
 またまた朝も早くからツア−の迎えが来る。といっても僕たちが頼んだんだからしょうがないけど、連日早朝に約束ごとがあるのは結構つらいもんだね。チェンマイの奥深い山の中に象さんの訓練所があり、そこまで行って像に乗った後で竹でできた筏で川を下る。それって面白そうだし、下村さんも記念に残るって言ってたから、何が何でも予約した。
 疲れた体に鞭打って迎えのバンに乗ると、話好きのタイ人のお兄さんがあれこれと日本の情報を聞いてきた。うるさかったけど人が良さそうなので、話を聴いているうちに彼の話に興味が湧いてきた。生まれて育ったところはチェンライで、チェンマイよりもっとミャンマ−寄りの国境の町だそうだ。
 そこは素朴な古い時代のタイが未だ保存されており、人間ものんびりと生活しているらしい。これから行くエレファントツア−もチェンライの人達が運営しており、失業対策だという。つまり少し前までは像を使ってチ−ク材を伐採・運搬していたが、チ−ク材が枯渇してきたので政府は禁止してしまった。チ−クの切り出しを禁じられると、像を使った仕事もなくなり、像使いも象も共に失業してしまった。
 その失業対策としてエレファントツア−が考えられたそうだ。観光客を集めて象の木材は運び作業の訓練を見せ、背中に客を乗せて昔の伐採道路をトレッキングし、木材を川に流したように筏で下ってもらう、そんな内容の失業対策だ。タイの野生象は絶滅の危機にあるため、現在使役されている象も保護していかないと、象が繁殖できる場所はどこにもなくなってしまう。実際に象使いが象を飼いきれなくて森林に逃がした結果、畑を荒らしたり人家近くに出没して射殺されることも少なくない。
 チェンマイから一時間も車に乗って像の訓練所に着くと、開放的で柵もない広場に象が沢山いた。馬とか牛なら整然と並んでいることはないけど、象の場合はきちんと並んでいる感じがするようだ。おとなしくて静々と歩き、ノンビリと佇んでいる。チョコチョコしているのは子供の象で、観光客にエサをねだっている。可愛いのでモンキ−バナナを一房10バ−ツで買って与えると、あっという間に夢中になって食べ尽くした。本当に可愛いやつだ。
 大人の象は丸太を運んだり、高い台の上に上げたり、数頭の象と共同作業を見せてくれた。そして遂に象に乗ってのだが、その歩くときの独特な揺れ方が面白かった。ふわりグラグラゆったりという感じで、象の背中で揺れているうちに川を渡りだした。川から上がると急な坂を上り、また急な坂を下りていく。特に崖のような急勾配を下がるときはひっくり返るのではないか、もうその足取りがおぼつかなくなって恐くなった。狭いジャングルのトレ−ルロ−ドが延々と続き、一時間近くも揺られたのだ。
 川を筏で下るともう終わりかと思うと、今度は牛車に乗せられてその辺を回られる。もう動物に乗るのは疲れたころ、ようやく昼食にありつけた。タイ風のバイキングで美味しかったけど、動物の背中に乗って揺られることに慣れていないせいか、体の心から疲労困憊した。
 ホテルに戻っても疲れは取れず、夜のチェンマイを散歩するのにも躊躇する。ナイトバザ−ルを見物していても、何だか虚ろでボケ−ッと歩いているだけ。寝るころになると気のせいか風邪のような症状を感じ、あわててロキソニン(坑炎症鎮痛剤)を飲んで寝た。
 明日はバスでバンコクへ戻り、小島君は飛行機でバンコク経由で札幌へ帰る。
to be continued