《はじめに》

 ことの始まりは、どうと言うことのないありきたりの理由からで
「健康の自己管理」が目標だった。
最初は、山に登りなどは眼中に無かったのです。
それが、いつの間にか「目標」が変わちゃったと言う事なのです。

 4〜5年程前から、ワイフと早朝にウオーキングをしてきた。
自分の健康の維持管理が目的。私は血圧が高めで、体重が多め。
ワイフは、「おまけ」で付いて来ている。
彼女はいつもすべて正常値の人だけど。
最初の頃はリキが入っていて毎日4〜5kmを45〜50分で歩いて、
その後に仕事というペース。

 自動血圧計(保険医協会.内科医推薦機種)で健康チェックしていたが、
歩いた後はいつも良好。こうしたことを1年ばかり続けた。
雨の日も風の日も風邪の日も、雪の日も、台風の日も、
とにかく毎日続けてきた。

 ところが、人間って同じ事ばかりやってると飽きて
くるのです。義務化って云うものは、段々それが精神的苦痛になってくる。
そこで、歩く「質」を変える事にした。
幸いなことに近場に良い山があるのだから、
我が家から登山口まで、車で僅か40分。

 それが、霊峰、早池峰山。
高さは1917mであまり高くはないが高山の雰囲気を持った山である。
なにせ、発想はウオーキングの延長であるから登頂しなくても構わない。
山の中腹でくたびれたら高山植物でも見て帰ればいいから気が楽である。
なにしろ早池峰山は高山植物(固有種)が多くて有名な山なのだから。

 そう思っていたところが、いざ登り始めると
かつて山屋だった頃の本能がムクムクと目覚め始めてきた事に気が付いた。
山屋に目覚めた本能はやたら山頂をめざし、
しかし己の肉体はそれを拒絶すると言う自己矛盾の迷宮に
入り込んでしまった。カッコつけましたが、何のことはない
「登りたいのに登れない」それだけのことです。