竹岡 雅史

 北海道にふんだんにあって、道産子の悩みの種を有効に利用する。

 一年の3分の2が雪で覆われている北海道は、ひょっとすると自然からただで与えられたエネルギ−を貰っている可能性がある。雪は零下2度C位の温度を保つマイナスのエネルギ−源で、それを捨てるのではなく保存するという意識で考えると、年間を通じて冷凍保存できる備蓄基地になる。つまり倉庫の周囲に雪を保存させる装置を設置することで、新鮮な穀物や野菜を始めとする食物備蓄基地が出来るのだ。
 すでに長沼では「雪中米」というブランドでキララ397を何時でも新米として出荷し、事実その味わいは8月でも新米そのモノだと評価されている。それに加えて風力発電が低温を保つファンを回し、太陽電池のパネルを備えれば電気を使用する維持費は極端に切り詰められる。前の章でもこの事実は述べたが、冬の寒さ凍れる現象をプラス思考で逆転させる発想が、道産子に求められている世紀末的な転換なんだと思う。
 春から再び雪が降る季節まで、通年に渡って零度Cで食料が保存できるなら、日本中から保存することで付加価値が発生するものを預かる。冷気保存を格安で提供できる倉庫群を(既存の倉庫を改良することも含めて)作り、日本の食料備蓄基地にする構想もある。

 風力発電はどの程度の電力を賄えるか。デンマ−ク(人口は530万人で面積は北海道の2/3)では、現在まだ国内総電力需要量の7%だが、10年後には20%に達する。北海道という土地柄を考えると、デンマ−クより風量(平均的な風速)が多く、場所によっては発電に必要な風が途絶えない場所もあると聞いている。現実にも日本中で一番の風力発電に熱心な地域で、具体的な計画も多く進められている。
デンマ−クの例から20%近くにまで電力需要を賄えるらしいが、性能を高める実験で成果が上がってきているため、30%を越えることも不可能ではない。風の力を伝達する軸受けを、ベアリングから磁石の同極浮力を利用することで、摩擦抵抗をかなり減らすことが出来た。つまりリニアモ−タのように摩擦抵抗を減らすことで、ほんの僅かの団扇で扇ぐような微風でも電気を発生できる。加えて太陽電池の改良とか、太陽熱の有効利用という考えも進化してきているそうだ。
 北海道が世界に向けてイベントランドとして名乗りを上げ、場所を提供することでチャッカリとお客さんを集める。そもそも観光とは歴史的な遺跡を見せたり、風光明媚な景色とか温泉などの憩いの場を提供することだ。そこで北海道で優れた人物が考えた面白い催しを行うなら、それを見物鑑賞をする旅を企画すると立派な観光資源になる。
 重要なことは「楽しくて為になる何かをやりたい人」に機会を与えることで、世界中から才能と知恵を集めること。それが徐々に文化を育てる種子となり、ゆくゆくは人間としての財産を集中させることになる。大きなことをいうならば、ギリシアとかロ−マが成し得なかった、人間というより地球中心の文化を考える大地となること。人間として貴重な知的財産を集中する場所を提供する。そこに集う人々が考えをまとめながら思想を巡らし、来るべき時代に対処できる哲学を構築する。ある意味で北海道は世界学校ともいえる、ユッタリとしたアカデミックな風土を作っていかねばならない。
 地球は小さくなったと感じがする。世界中の空を24時間中休むことなく飛行機がモノと人を運び、電波がくまなく空中にネットを張っている。インタ−ネットで地球の裏側の誰かと連絡を取れば、翌日にはその人と会って共同作業が可能だ。つまり北海道から世界に向けて興味を引く提案を発表すれば、即時に賛同した人々が意見を返信するとか、時間的に余裕があれば来道することも出来る。
 要するに呼びかけて人を引き寄せる、魅力ある話題を提供できるなら、北海道は世界中から頭脳を集めることが出来る。それは観光資源としてではなく、これからの世のなかに必要な会議として。軍隊を持たないで防衛を計るには、世界にとって貴重な人材を集めること。人間の楯作戦を悪用するのではなく、戦争のない世界のモデル地区としてアピ−ルする。世界にとって無くてはならない人に集まってもらい、不可能とされていた戦争が起こせないモデル地区を北海道に作ってもらうのだ。そのためにこの大地を無償提供する。
 ひょっとすると地球を危機から救う知恵を生む、貴重な頭脳集団を攻撃しようとする国もあるだろう。それでも国連よりは戦争抑止効果はあると思える根拠とは何か?ヒュ−マン・ブレイン・ネットワ−クの価値を高め、人類が生きる意味を考える集団を滅ぼすことの損失を考えさせることにある。我々を攻撃することで何を失うのかを気づかせるのだ。