竹岡 雅史

「サムイ島上陸」 
        2月25日曜日
 スラタ−ニの線路上脇のレストランで、15バ−ツのネスカフェをすすっていると、迎へのバスが到着した。オカマ風のお兄さんが身をくねらせて、こっちへ来いと手招きをしている。タイ人の中でも特に色黒のお兄さんは、どうやら此処からサムイまでのガイドらしい。彼の指示に従ってバスに乗り込むと、何処からともなくぞろぞろと客が出現した。 彼らもみんなサムイへ行く客だと思っていたら、パンガン島とか他の島へ渡るそうだ。そのうち次の列車が到着して、そこからも乗り込んできたので、バスはほぼ満員になる。港というより波止場のほうがピッタリする船着場で、ボンぼろぼろのフェリ−に乗せられる。汚くてシ−トも手垢で真っ黒になっているし、トイレは二度と入りたくない無残なものだった。
 白人たちはとにかく甲板で日焼けするように、つり上げた魚のように寝ころんでいる。僕たちは汚い船室のシ−トに座り、開け放された窓の外を飛び魚が跳ねるのを見ていた。小さな飛び魚がピョンピョンとジャンプしている。とにかく暑いタイの海をフェリ−は静々と進み、およそ4時間近くかけてサムイ島の波止場にたどり着いた。
 当日のホテルが決まっていないので、とにかくホテルの多いチャウエン・ビ−チまで乗合トラックで行く。20分くらいでチャウエンに着くと、インタ−ネットで明日からの予約を入れたホテルに確認しに向かう。ところが予約は取れていなかった。ほかに開いた部屋はないかと尋ねると、パンフレットとは全く次元の違う粗末な部屋を見せられてガッカリし、値段を聞いて2000バ−ツで二度ガッカリ。
 ガッカリしてもしょうがないので、気を取り直して他のホテルを当たることにした。少し不安なのはサムイはリゾ−ト地なので、バンコクのような値段はないのかもしれない。旅行の案内本は6年前のモノなので、現状はもっとインフレが進んでいるのかも。そんなことも考えながら、とりあえず海辺の屋外レストランでビ−ルを飲んで案内書を読んだ。 するとウエイトレスの女性が部屋を探しているのかと聞いた。レストランはホテルが経営しているそうで、1500バ−ツでツインベッドの部屋があるというので見せてもらったら、なかなか綺麗な二階の部屋に案内された。エアコン付きでテレビを冷蔵庫も金庫もベッドも二つあったけど、残念なのは湯船がないシャワ−ル−ムだけというところか。
 借りることにして荷物を部屋に置き、チャウエンの市街に出掛けて旅行案内所を探す。明日から何日も泊まるところを決めるためだ。何といってもチャウエンは少し混みすぎてうるさいので、もっと静かでノンビリできる本当の滞在型ホテルを探したかった。チャウエンは本当ににぎやかで商店や露天の店が多く、食べるところ探しにも苦労しない便利な場所だった。でも僕らはゆったりノンビリを求めているので、多少不便でも静かでプライベ−ト・ビ−チで寝ころびたかった。それをしにサムイまで来たんだ。
 あった、あった、ずばりプライベ−ト・ビ−チでシュノ−ケリング可能な透明度を誇るオン・ザ・ビ−チ・ホテルがあった。その名をヨット・クラブというホテルで、チャウエン・ビ−チとラマイ・ビ−チの中間の小さなビ−チに、ぽつんと立っているホテルだ。旅行社に感謝しておカネを払い、明日の迎えを頼んでチャウエンをブラブラする。
 サムイ島は淡路島の半分くらいの面積らしいが、淡路島そのものに行ったことがないので広さが具体的に分からない。そこでレンタル・バイクを借りて明日は島を一周することにした。旅行社からもらった地図を眺めると、ぐるっと回れる幹線道路はある。