竹岡 雅史

「サムイ島を一周する」
    2月26月曜日
 宿泊したコ−ラルリゾ−トを正午ころに出発し、パンフレットでは素晴らしい景観のヨットクラブに移動した。チャウエンから20分程すると、山の中を登り展望のよい岬を過ぎて下るころ、こじんまりとした綺麗なビ−チが見えてきた。幹線道路から脇道に少し入ると、扉の付いていないフロントに到着した。古いけどなかなか素敵な外観だ。
 受け付けを済まして案内された部屋は、小さな沼のほとりに立つ独立した家屋だ。ベランダがあって扉を開けると、すべての家具はラタンで出来ている。ベッドも棚もタンスも椅子も机もラタンで、ベッドは白いレ−ス地の蚊帳張りで覆われていた。バスル−ムを覗くとバスタブがあって広々としている。僕たちはリゾ−トライフをユッタリと楽しめそうだ。
 部屋の点検を終わって一段落すると、今度は周囲の状況を見に行った。きちんと手入れされた庭を少し歩くと砂浜になり、真っ青な海の湾を見渡せる。まるで映画「ビ−チ」そっくりの景色に驚いた。椰子の木が繁る山と不思議な形の岩に囲まれた海は、透明度が高そうで期待できる色をしている。砂浜に立ち並ぶ椰子の木に実がいっぱいぶら下がって、強い風が吹いてくると今にも落ちそうだ。
 古いけどサッパリとしたバンガロ−風コテ−ジ、静かで椰子が周囲に繁るビ−チ。これで朝から晩までボ−ッとできる絶好の場所を確保できた。朝食付きで1500バ−ツだから予算を少しオ−バ−したが、食費を節約することで何とか切り抜けられるだろう。
 体調も完全になったので、さっそく海で泳いでプ−ルで身体を洗い、日光浴をするための根椅子を確保した。天秤を担いで料理を出前するおばさんが来たので、試しにソムタムを注文するとこれが美味しかった。ついでに焼きとりと焼きおにぎりのようなモノを頼むと、これまたごきげんの味だった。ボリュ−ムがあるので腹も満ち足りて、100バ−ツなら食費は浮くだろうと満足。
 浜から数十メ−タ−はなれた海上には、タイ風の漁船が停泊していた。どうも水上生活者のようで、漁から帰ってきても誰も上陸してこない。それが10隻くらい湾内にゆらり漂っているのが、なかなか風情があって心が和む。湾の奥にビ−チが位置しているので、波は穏やかで泳ぎやすくておまけに遠浅だ。
 フロントに行ってシュノ−ケリング一式を借りて、湾内を潜ると熱帯の魚が小さいのも大きいのも泳いでいた。特に大きな岩の回りに多く、つい触ってみようとして手を伸ばすが、ピャピャッと逃げてしまった。二時間近くも潜っていると、また腹が減ってきた。食費節約のため我慢して、今度はバイクを借りて島を一周することにした。初日から結構忙しくして、これでゆったりリゾ−トライフを楽しめるのだろうか。
 バイクは一日につき200バ−ツでチャウエンの150バ−ツより高かったが、ホテルに帰ってから返しにいく手間を考えると600円で手を打つ。バイクは新車のホンダのスポ−ツカブで、二人乗りすると急な坂では苦しくなったけど、一時間半で島を一回りだ。 バイクは24時間の契約なので明日の夕方に返せばいい。ホテルに帰って夕食にもバイクに乗ってラマイに足を伸ばし、屋台レストランで食事をして露天をひやかし歩く。
 部屋に戻って休んでいると、ク−ラ−がやたらと騒音を立てることに気がつく。天井にはヤモリのようなトッケイが這っている。沼の近くなのでモスキ−トが襲ってくるので。ベランダで夕涼みすることは不可能だった。何から何まで上手く行くわけはないか。
「ラマイに安くて美味しい屋台発見」 
   2月27火曜日
 久しぶりに朝寝をタップリと取り、チャウエンまでバイクで遊びに行く。最初はチョコチョコ迷った道も、すぐに地形となじんで走れるようになった。ビ−チのあるところから辺鄙で古いたたずまいを残す集落を尋ねたり、椰子とバナナの生い茂るプランティションの真ん中を走り抜けたり、熱帯をバイクで飛ばすのは本当に快適だ。しかしノ−ヘルなので顔黒になるし、半ズボンにTシャツなので手足ヒリヒリ状態になった。
 チャウエンに行った理由は。マレ−シア方面に行くためのチケットを購入し、ホテルやバスを確保するため旅行社を尋ねるためだ。ヨットクラブを紹介してくれた所に行き、目的を話すとすぐさま手配してくれた。これで安心してサムイで何も心配なくボケ−ッとできる。旅行者の人を信用していたので、本当に何も心配はしていなかった。サムイ/スラタ−ニ/バタワ−スまでの船とバス、ペナンのジョ−ジタウンでのホテルを予約した。
 そのあとバタフライビ−チまで行ってみたが、ヨットクラブのビ−チの方が素敵だったので、ラマイの方を散策する。道端に並んでいたレストランでカオパッとヌ−ドルを食べるが、そんなに美味しくはないのに高めだった。
 なら夕食はぜったいに旨いところとはりっきて、ラマイの穴場を探すつもりであれこれ歩き回った。屋台の店が並ぶフ−ドセンタ−をふらふら冷やかしていると、どの店からも誘いがかかって煩かったので、一番呼び込みが少ない店に入ったら、そこが旨くて安い店だった。トムヤンクン、エビとガ−リックのカオパッ、タイ風寄せなべ具たくさん、シンハビ−ルにムネラルウオ−タ−にサラダ、食べきれないので少し残して340バ−ツ。
 タイにもコンビニはあるけど、何でも安くそろっているのは中国人が経営している、ミニス−パ−のような店だ。酒を買うのはそんな店が多く、今日もそこでウイスキ−を買ったが、タイのウイスキ−は米で作っている。メコンウイスキ−が有名だが、ハッキリ言って不味くてウイスキ−の味はしない。特に不味いというかウイスキ−の味とかけ離れているのが、今日買ってしまった「SANG SOM」サンソンというのは酷かった。
 タイ製はウイスキ−だけでなくラムも味がラムでない、表現しようがない代物が多い。安いから我慢して飲むわけだが、サンソンは思わずゲ−ッとなるので殆ど捨ててしまう。酒を買って不味いからと捨てる経験を初めてした。タイはやっぱり不思議な面が多い。
 ホテルに帰ると、ロビ−の横に本棚があって、ドイツ語や英語の本に混じって日本語のもあったから借りてきた。「鷲の驕り」服部真澄という女流作家の、特許をめぐる経済サスペンスで面白かった。日本製品が特許に抵触するように、アメリカが仕組んでいたのを官僚と主人公が組んで対抗し、めでたしめでたしの話し。
 バイクとか自動車のレンタル料金は安いけど、結構交通事故も多いらしい。事実僕たちも何回か事故の風景にお目に掛かったし、幹線道路の脇に転がっている車もある。僕が運転した感じでは、彼らタイ人の運転マナ−は決して悪くはないと思う。ただ飛ばしすぎと追い越し好きが多い。プップ−、プップ−とやたらクラクションを鳴らすのも多い。
 バイクが果たしている役割は、日本のマイカ−とは問題にならないくらい、生活に密着している。婆さんも小学生も物売りも、みんなバイクに乗って暮らしている。バイクがない生活は考えられないだろう。その殆どが日本製でホンダが多い。圧倒的に原付とそのボアアップしたのが多く、家族四人が乗っている光景も珍しくない。
 バイクで椰子の林を走り抜けるのは、気持ちがよくて本当に楽しかった。