〈アルーシャ国立公園に咲く花〉

  アールシャ市が近づいてくると、また、徐々に緑が多くなってくる。街を過ぎると、未舗装の横道に入りアルーシャ国立公園へと登って行く。ここは、標高が高く空気がヒンヤリして気持ちがいい。

  ここでランクルのルーフを外す。そして顔を出す。両脇の木々には猿が沢山いる。ガイドには良く見える様だが慣れないと何処にいるのかよく分からない。やがて公園を管理するレンジャーのゲートを越えて、ほんの10分位でキリンやイボイノシシ、シマウマやバッファローなどが沢山見られる。あまりに簡単に動物が観れたので日本のサファリパークの様で現実味が無い。

  ケニアからタンザニアのアルーシャまで、サバンナの中を500H以上の距離の移動でも野生動物は見えなかった、いや途中インパラを一頭見たかな、その程度。概ね、家畜以外の動物はほとんど見なかったと言っていい。

  これって、本当の本物? 日本のサファリパークで飼われている「従業員的見せ物動物」と何処が違うの? いやいや、自分の持っていた先入観の方が毒されているのだ。これが本物なのだと自分に言い聞かせた。「本物」は実にさりげないものなのだ。

 アップダウンの山道を走り続け、日が傾いてきた頃に湖の畔に到着、遠方にカバが見える。大きく開口しているので遠くてもすぐわかる。湖畔を廻ると、木陰から湖の一角にピンクの花が一面に咲いているが見えてくる。何の花だろう、大群落である?  見事な花だ。車が近づくと、そのピンクの花が一斉に空中に舞う。驚いた! 無数の鳥だ!!圧倒されるほどのフラミンゴの大群である。スケールの大きさは、さすがにアフリカである。
 (鴨川とは規模が違い過ぎる!!)


 今頃になって、ずっと雲に隠れていたキリマンジャロが、やっと姿を見せてくれる。湖の向こうには、夕日に照らされた雪のキリマンジャロが見えた感無量である。

 3年待ったのだから。〈国立公園内のロッジと不気味な老人〉
標高約2000m程の高原地帯のナショナルパーク内に宿泊施設があるとは知らなかったモメラロッジと言う名である。

 宿泊はコテージ、食事はフロント棟であるが、なにしろ広い敷地にアフリカの民家風コテージが散在しているのだ。敷地内はきれいに整備されているが、むろん周囲はサバンナそのものである。直ぐ近くにキリンがいる。ここは、自家発電なので夜は10時で送電が止まると、まったくの静寂、まったくの暗闇になる。それ以後はローソクか、持参したヘッドランプを使う。風の音で夜中に目が覚める。寒い、室温は16℃を示している。外に出てみる、風は強いが、晴れていて満天の星が瞬いている。どれが南十字星かわからない。

 ヘッドランプでメモ帳に記録を書く。家族のことなどを考える。思えば遠くに来たものである。

 5時30分、起床。電気が点く、外はまだ夜明け前で風が強い。パッキングする。少し明るくなってきた頃、朝食を摂りにフロント棟に行く。まだ、ほの暗い渡り廊下を腰の曲がった痩せた老人が歩いている、何か様子が変だ少し不気味。歩き方がおかしい。近寄ってみると、なんと足の長い大きな鳥が建物の中を闊歩しているのだ。

  日本の鶴より二まわり程も大きい。さらに近寄ってよく見ると鳥も警戒して動きを止め、こっちを振り返る、どことなく愛嬌のある目である。アフリカハゲコウであった、この鳥はテレビで何度か見てるので知っていた、コウノトリの仲間で(ハゲワシと並んで)腐肉を食べるサバンナの掃除屋である。実物がこんなに大きいとは知らなかった。

  何年か前のピュリッツアー賞の写真で、衰弱した幼女を狙うハゲワシがこの鳥である。でも、ロッジのスタッフは気にとめる風でも無いようす。残飯掃除の仕事でも請け負ってるのか?