〈深夜の出発〉

  早めの夕食後、アタックは今晩23時出発。起床は22時の予定に決定。夕方5時頃には、就寝。すぐ眠れる。

 22時起床。もう食事の準備が出来てる。餅(日本から持参)と中華スープ。柔らかい餅をスープに入れると、これがなかなかいける。日本人ガイドの経験から出たメニューである。水分とカロリーを同時に摂れる。さらに例によって紅茶、3〜4杯飲んだ。ポーターやコックは寝ないで準備したのだと思う、同じように歩いて来たのに気の毒である。しかし、彼らは我々のアタック中に充分時間がある筈だからゆっくり休める筈。

 外は、相当冷え込んでいる様子、-10℃。防寒着を着用しヘッドランプを装着。私が、ガイド氏の後ろの2nd、光栄である。ヘッドランプを頼りに夜道の登山である。滑り易い砂礫の道である。途中ランプの電池切れで困ったがそのまま登った。星の数がものすごい、瞬きもしない。天の川があんなにはっきり見えたのは初めてだ。

 途中、現地ガイドからメンバーの数人が足元のふらつきを指摘された。ガイドは足取りで高度(所)障害の判断をする。転倒は事故につながるからだ。チーフガイドは絶対的で、逆らうことが出来ない決まりである。ガイドの判断でGO DOWNと言えば従う約束である。だから下山させられるかも知れないメンバー(?)の為にサブガイドが3人付いた。

 〈低酸素を実感、万年雪に驚く〉    

  4時40分。5500m地点で休憩、ここで-15℃寒い。ヘッドランプの電池を交換する。軽量化のために高価な単三のリチウム電池なのだが余り電池が持たない(せいぜい3〜4時間、ハロゲン球のせいか?)。この辺まで好調であったが、さすがに低酸素。ゼーゼー肩で息をする。休めば寒いし、歩けば息切れする。

  15〜20歩で息切れで、呼吸を整える。その繰り返しだ。もうじきギルマンズポイントの筈、僅かの高さが遠く感じられる。5時25分ギルマンズポイントに到着。5650mである。予想よりも早く着いたので全員でウフルピークを目指す。ここで休憩、まだ真っ暗である。まだ星と月が見える。下界にモシ(MOSHI)の街の光が見える。

  東の空に、最初は黒に近い赤い色調の線だった地平線が、徐々に赤さを増す。天候は晴れ、風が強く、気温は-10℃で寒い。休んでいると芯まで冷え込んでくる。メンバーに高山病で嘔吐している者がいる、頭痛を訴えていた。しかし、休んでいるうちに良くなってきたようだ。

 5時50分、ウフルピークに向けて出発。

  途中少しずつ明るくなり夜明けとなる。空の色は青では無い、黒に近い群青色。白い氷河が見えてくる。さすがに、空気が薄くて息切れしやすい、登ると苦しい。10歩に一度は立ち止まり肩で息をする。苦しくて思ったように歩けないものだ。でも下り坂だと大したことはない。登ったり下ったりしながら1時間25分頑張る。ピークが見てきた頃、日の出を迎える。周囲の雪の量の膨大なことに驚く。ここは赤道直下だ。